これまで、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)しか使った事がない人にとって、一眼レフやミラーレス一眼を使う醍醐味のひとつにレンズの交換式ができる事があげられます。
交換レンズにはそれぞれ焦点距離が設定されており、その数値によって「望遠レンズ」や「広角レンズ」などと分類して呼ばれます。
あなたはもう、レンズの見分け方を知っていますか?
レンズは記載されている焦点距離(何ミリ)によって、撮影できる範囲が変わります。
今回はたくさんあるレンズについて、焦点距離による大まかな種類と見分け方。
その特徴について書いていこうと思います。
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焦点距離の違いによる画角の変化
レンズ交換式のカメラに装備するレンズは各レンズ毎に焦点距離が設定されています。
焦点距離とはそのレンズでピントを合わせた際、レンズ中心点から撮影素子(イメージセンサーのこと)までの距離のことです。
もちろんフィルムカメラの場合にはセンサーではなく、フィルムに置き換わります。
レンズの焦点距離はミリ(mm)で表され、その数値は写真を撮影した際の画角(映る範囲)や写り方の特性に影響します。
上の写真のレンズはオリンパスの広角ズームレンズの焦点距離です。7mm〜14mmの画角を撮影する事ができます。
こちらはマイクロフォーサーズというセンサーサイズの規格ですので、35mmフルサイズセンサーのレンズでは14mm~28mmの画角と置き換える事ができます。
数値は小さいほど広角(ワイド)になり、より広い範囲を撮影できます。
逆に数値が大きくなると、より望遠(テレフォト)となり狭い範囲が大きく撮影されます。
撮影時には特にレンズとセンサーの距離を意識することはありませんが、この焦点距離の数値によって、写真に映る範囲が変わってくることを覚えておきましょう。
また、各レンズにはそれぞれ特徴があり、その焦点距離によって大まかに分類されています。
次の項目ではそれぞれの焦点距離と分類、特徴などについて考えてみましょう。
焦点距離によるレンズの分類
それでは実際にレンズがどう言った焦点距離によって分類されるか見ていきましょう。
レンズの焦点距離の分類は写せる範囲が広いワイドなレンズから並べると、下記のようになっています。
- 魚眼レンズ(歪みを活かした広角レンズ)
- 広角レンズ(~28mm)
- 標準レンズ(28mm〜50mm)
- 望遠レンズ(50mm~)
- 超望遠レンズ(400mm~)
※()の中は35mmフルサイズセンサーカメラでの焦点距離
なお、焦点距離表記の記載はフィルム時代からの写真の画角イメージの基本となるフルサイズセンサー(35mmセンサーでの換算)の焦点距離で記載しています。
APS-Cであれば1.5倍(キヤノンのみ1.6倍)、マイクロフォーサーズであれば2倍の焦点距離の画角となります。
APS-Cやマイクロフォーサーズ用のレンズ購入の際には、パッケージやカタログなどに(35mm判換算)の数値が記載されている事が多い為、
そちらも参考にして選んでみると分かりやすいです。
参考までに換算した際の焦点距離を表にしておきますので、参考にしてみてください。
センサーサイズ | |||
フルサイズ(35mm) | APS-C | マイクロフォーサーズ | |
焦点距離 | 300mm | 200mm | 150mm |
80mm | 約55mm | 40mm | |
50mm | 約35mm | 25mm | |
24mm | 約17mm | 12mm |
魚眼レンズ
「魚が水面下から水面上を見上げた場合、水の屈折率の関係で水上の風景が円形に見える」というところからことから魚眼レンズ(フィッシュアイ)と呼ばれています。
上の写真は35mmフルサイズの換算で7mmです。
魚眼レンズは最も広範囲を撮影する事ができるタイプのレンズで、180度近いの広さを見渡す事ができます。
天体(天球)の撮影や歪みを利用したデフォルメを重視する撮影など、超広角レンズ以上に広い範囲を写す際に使用されます。
一般的に写真用の広角レンズはできるだけ景色(被写体・写したい対象)を歪ませる事がないように意識して設計されるのが普通です。
しかし、魚眼レンズは一般的なレンズとは狙いが異なり、歪みが出ても広い範囲を撮影できる設計を採用しています。
あえて強調されたパースと歪みから、不思議な空間に迷い込んだかのような独特な撮影が可能です。
画面中央は歪みにくく外側ほど歪む特性から、風景の撮影ではどこに何を配置するかで悩むことになるかも知れません。
真っ直ぐな物も真っ直ぐに描画撮影する事ができないことから、特に意図して撮影する場合を除くと、上の写真のように何を撮りたいのか分かりにくい写真となります。
そう言った意味では使いどころが難しいレンズと言えます。
いろいろ試して、歪みを楽しんで行きましょう。
広角レンズ
厳密に何mmが広角レンズという決まりはないのですが、一般的には標準レンズより画角の広いレンズを表します。
概ね「28mm(35mmフルサイズの場合)」よりも焦点距離が短い物は広角レンズと呼んでも良いでしょう。
上の写真のように20mm以下など極端に短い焦点距離は「超広角」と呼ばれることもあります。
広角レンズでは望遠と異なり、数ミリの差が大きく画角に影響します。
しかし、魚眼レンズとは違い、できるだけ歪曲収差を抑えるように設計されており、魚眼の同じ焦点距離レンズと比べた場合、比較的自然で広がりのある写りとなるのがポイントです。
とは言え標準レンズに比べると、画面端近くは樽型の収差が発生する為、パース(遠近感)の強調された写真となります。
また、たくさんの物を同時に写し込む為、それぞれの物は小さく映ることから、同じシャッタースピードで撮影した場合には標準や望遠レンズに比べて、ブレが発生しにくいレンズとなっています。
使用するタイミングとしては「よりたくさんの風景を取り込みたい」、「狭い屋内でできるだけ全体を撮影したい」などワイドな画角を利用した撮影を狙うほか、歪曲収差を利用してパースを強調した表現を狙う際にも使用でき、迫力のあるシーンを演出できます。
逆にいろいろなものが写ってしまう為、被写体との距離や構図によって、魚眼レンズ同様に何を見せたいのか分からない写真になってしまうこともあります。
日常的に使用する広角レンズとしては28mmが非常に使いやすい画角です。
分類上は広角として扱われている焦点距離ですが、見た目の印象としては標準に近い印象ですので、スナップなどにむいています。
人気の単焦点高級コンパクトカメラのGRなどでも採用されている為、そのファンは多いと言えます。
標準レンズ
厳密な決まりはないようですが、通常35mm〜50mm前後の焦点距離を標準レンズと呼びます。
なぜ標準と呼ぶかはいろいろな説があり、一説ではフィルム時代の初期となるライカとコンタックスにおいて、デファクトスタンダードつまり規格で事実上の標準レンズであった「50mm」を基準に前後を標準レンズとして定めた焦点距離だったとか。
別の説では「肉眼に近い見え方の画角が標準レンズ」とも言われています。
確かに「28mm〜50mm」は自然に見えやすく、スナップなどにも向く焦点距離である為「標準域」であると言えます。
時代によって標準のイメージは変わっており、昭和の頃には「広角」と呼ばれていた28mmも標準に分類される方も多くなっています。
兎にも角にも、風景写真はもちろん、スナップやポートレートまで対応することから、カメラとレンズがセットになったレンズキット製品などに付属する基本のズームレンズなどでは、通常この28〜50mmを含むレンズが採用されます。
一般的なスマートフォンのカメラも同じ画角のレンズとなりますので、構図を考えずカメラ任せでオート撮影してしまうと、スマートフォンと大差ない写真になってしまうこともあります。
そんなあまり特徴がない画角の焦点距離ではありますが、日常的な撮影の中で最も使いやすいレンズです。
狭い屋内ではワイド(広角)側が不足することもあるのですが、通常の撮影であれば自分自身が一歩下がるなどして、調整するなど工夫することを覚えることもできます。
被写体を画面のどこにおくのか、どの距離で撮影するのか、ピントをどこに設定するのか。
まず、この焦点距離を使いこなす事が上達の近道です。
望遠レンズ
一般的には標準レンズより画角の狭い、焦点距離の長い(大きな)レンズを望遠レンズと分類します。
概ね焦点距離は50mmよりも長いレンズが望遠レンズにあたります。
入門のダブルレンズキットなどで付属する望遠ズームや高倍率ズームでは、概ね焦点距離は80〜200mmの望遠域が採用されます。
また、400mm以上の望遠レンズは「超望遠」と呼ばれることもあります。
望遠レンズは小さな物をより大きく撮影する。遠くのものを引き寄せる特徴があります。
初心者の頃はそのインパクトから多用しやすくなりますが、その分だけブレも拡大して撮影されることを忘れがちです。
光量が不足するシーンでは如実に腕やカメラの手ぶれ補正性能が現れる部分でもあります。
標準レンズや広角レンズに比べて手振れしやすいレンズとなること覚えておきましょう。
望遠レンズは野鳥や動物などをはじめ、スポーツ選手や運動会でトラックを走っている子供など、間近に近づく事ができない被写体を大きく撮影したい場面。
また、画角内にある複数の被写体の距離を圧縮して撮影したい際にも有効です。
被写体と背景の距離の差によって、標準レンズよりもボケが作りやすいことから、静物・花などの撮影などにも活躍します。
実際の焦点距離の差による画角のイメージ
それでは実際に一般的な焦点距離で撮影された写真を元に画角のイメージを掴んでみましょう。
焦点距離は300mm(望遠)、80mm(中望遠)、50mm(標準)、24mm(広角)の4つを比較します。
まず上の2枚の写真を見てください。
左側の「山間を流れる春の川(高知県仁淀川町)」の写真。レンズの焦点距離は35mmフルサイズのカメラを基準として80mmのレンズです。
一眼レフのレンズキットなどで標準ズームのテレ端(最望遠側)付近の画角ですね。
次に右側の「山間の段々畑と山桜」を撮影した写真は300mmで、望遠ズームのテレ端(最望遠側)で撮影しています。
実際に画角(撮影できる範囲)を比べてみましょう。
外側(写真全体)が80mmのレンズを装備した際に撮影できる写真。
内側の赤線で囲んである部分が、その中で300mmのレンズで撮影した際に撮影されるであろう大まかなエリアです。
どちらも望遠レンズに分類される画角ではあるのですが、焦点距離によって撮影できる写真が大きく変わる事が実感できると思います。
さらに焦点距離の短いレンズで撮影した場合はどうなるでしょうか。
こちらは先ほどの場所より若干右側に移動しての撮影となりますが、
先の2枚が焦点距離は80mm(中望遠)と300mm(望遠)だったのに対し、こちらは50mm相当の標準レンズの焦点距離で撮影した写真です。
川の右上に同じ山桜が確認できるのが分かりますでしょうか。
先の80mmの写真では見えなかった山の形状。雲の様子などを周囲の環境も把握する事ができます。
周囲のロケーションをより理解しやすくなってきました。
そして、最後がこちら24mmの広角レンズで撮影です。
レンズキットの標準ズームのワイド端(最広角側)付近の画角です。
縦位置で撮影すると地面か空ばかりの絵になりそうでしたので、今回は横位置で撮影しています。
横位置で撮影しているにもかかわらず、縦位置の50mm以上に空の閉める面積が大きくなっているのが実感できますね。
焦点距離を理解してレンズの特性を生かした撮影を
簡単ではありますが、広角レンズから望遠レンズまでの画角について、実際の写真サンプルと共に解説してみました。
レンズ交換式のカメラで写真を楽しんでいきたいあなたが、どんな写真を撮りたいのかによって選ぶレンズは変わってくることは確かです。
ただ、同じレンズであっても被写体との距離や設定など、撮影方法によって写真は無限に変化していくことを忘れてはいけません。
そんなレンズの特性を少しずつ理解して使い分ける事が、写真撮影技術の上達に繋がる要素の1つでもあり、楽しみでもあると言えるでしょう。
同じレンズでの撮影方法による違いなど、その辺りはまた別の記事で詳しく書いてみたいと思います。