最近はLUMIX S1用標準ズームとして、SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN Artをメインのレンズとして使用しています。
しかし、もう少し望遠が欲しいと感じることがあったり、頼まれた撮影で接写が必要なシーンがあったことから、5月末にシグマの単焦点マクロレンズ「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO Art」を購入してみました。
マクロレンズということで、使用は限定的と想定して購入したのですが、3ヶ月経った今は思ったよりも他用途で使用できるレンズと感じているので、作例つきで紹介したいと思います。
SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACROレンズの主な特徴
SIGMAの105mm F2.8 DG DN MACROレンズは、SIGMAがフルサイズミラーレスカメラ用に設計した高性能マクロレンズの1玉です。
特徴をまとめると次のような感じですが、よく書かれている内容なので、すでに調べている方は読み飛ばしても大丈夫だと思います。
高解像度と高コントラスト:
高度な光学設計により、画像の中心から端まで高解像度と高コントラストを実現しています。
特にマクロ撮影で重要な細部の描写力が優れています。
最大倍率1:1の等倍撮影:
被写体を等倍で撮影できるため、昆虫や植物などの微細なディテールを捉えるのに最適です。
最短撮影距離:最短撮影距離は29.5cmで、被写体に非常に近づいて撮影できます。これにより、小さな被写体を大きく、詳細に捉えることができます。
優れたボケ味:
9枚羽根の円形絞りにより、美しいボケ味を提供し、被写体を際立たせることができます。
高いビルドクオリティ:
レンズ本体は防塵防滴構造を備え、耐久性が高く、野外での撮影にも対応しやすい。マクロレンズのAF範囲を規制するフォーカスリミットスイッチ、AFLボタンに加えて、物理的な絞りダイヤルを備え、操作性に優れています。十分にプロフェッショナルな使用にも耐えうる作りといえます。
HSM(超音波モーター):
パワフルで静音性に優れたHSMを採用しており、高速で正確なオートフォーカスを提供します。スムーズで精密なフォーカス操作が可能です。
多用途:
マクロ撮影だけでなく、ポートレートや風景撮影にも適した焦点距離と性能を備えており、さらにテレコンにも対応していることから、非常に汎用性が高いです。
SIGMAの105mm F2.8 DG DN MACROレンズは、マクロ撮影をはじめとする多用途な撮影シーンで優れたパフォーマンスを発揮します。
このレンズは、HSMを搭載しており、静かで迅速なオートフォーカスが特徴です。
SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACROの外観
デザインのバランスとしてはやや細長いため、少しアンバランスな印象もあるが、質感は高い印象。
重量はEマウント700g、Lマウント710gとミラーレス時代の中望遠としては軽くはないが、一眼レフ時代の中望遠マクロに比べると、かなり軽量・コンパクトなレンズに仕上がっています。
質感のクオリティもさることながら、操作性も良好で、お馴染みのAF・MFを切り替えるフォーカスモード切り替えスイッチのほか、マクロ撮影時にフォーカスエリアを限定するフォーカスリミッタースイッチが備わっています。
リミッターはマクロ撮影時は0.295-0.5m、風景撮影やポートレートでは0.5-無限もしくはFULLで撮影することが多いです。
AFLボタンはカメラによって使用できないこともあるようですが、使えるカメラならカスタマイズして機能を割り当てることもできるもの嬉しい。
絞りリングクリックスイッチは絞りリングのクリック感をON、OFFで切り替えるスイッチ。
絞りリングのクリック感も良好なので、個人的には常時ONにしているが、動画などに使用するならOFFで使うかもしれない。
スイッチ類を中心にレンズ先端側のリングがフォーカスリング。マウント側の右のリングは絞りリング。
ちなみに絞りはF2.8からF22の範囲で調整できます。
リングを操作した際の触感は非常に心地よく、所有感を満たされるポイントですね。
しっかりと官能値を意識して設計していることが、ユーザーとしても感じられる点が嬉しいです。
こちらのシンプルなスライドスイッチが、絞りリングロックスイッチ。
個人的に使用したことがないのですが、絞りリングを「A」以外のポジションでONにすると、誤って「A」ポジションに入らなくなるスイッチです。
フードは逆付可能な、ねじ込み式を採用。取り付け部がラバー、本体が硬質の樹脂。
ラバー部分は滑り止めになり持ちやすいのですが、タオルなどの繊維状の埃が付着しやすいのが少し難点になるかもしれません。
SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO Artの描写・作例
接写
マクロレンズというと、「花の写真のような小さなものを大きく(等倍)撮影する。」という意味で購入される方が多いようです。
このレンズも等倍マクロなので、小さな花を大きく繊細に描写することは最も得意な分野。
中望遠ながら接近できるという利点のため、2.8でも十分なボケを得ることができます。
SIGMAの24-70mm F2.8もかなり寄れるものの、この新しいレンズはワーキングディスタンスの自由度が高いのが利点。
ただし、フルフレームのカメラでF2.8ではピントの面が極薄なので、fpのようなグリップの小さな手ぶれ補正の弱いボディで手持ち撮影する場合、そこは注意する必要がありそう。
その際は、ISOアップでシャッター速度を稼いだり、三脚を使うなど工夫して対応したいところです。
マイクロフォーサーズのOM-1などなら、ボディ内の被写界深度合成があるので、必要に応じて飛び道具が使えるのですが、ここは基本に戻って対応する方が良いですね。
中望遠距離
このレンズはマクロレンズという括りの単焦点レンズですが、中望遠距離での描写も非常に良好といえます。
当然、細かい描写や接写が得意な単焦点レンズとしての意味合いが強い。というのは間違っていないのですが、接写以外の解像度や表現力が非常に優れている単焦点としても、十分に使用することができます。
ボケについても硬い印象はなく、自然な立体感をできるため、標準域+1のレンズとして持っておくと重宝します。
車系SNSで知り合って、イベントで話しているうちに撮影することになった知人の愛車の撮影でも活躍しました。
逆光耐性
コントラストが高くシャープな描写を行えるだけでなく、風景などでの逆光耐性も悪くありません。
SIGMAのテレコンバーター「TC-1411(1.4倍)」、「TC-2011(2.0倍)」も使用できるため、AF速度を意識しないシーンであれば望遠単焦点としても使用可能で、非常に使い勝手の良いレンズと言えます。
もちろん、絞りが暗くなるという点はありますが、フルフレームのF4、F5.6なら、望遠域でボケないということはないので、
持ち歩くレンズを限定したい際には有効です。
まとめ
コロナ禍の2020年に登場したこのレンズ。
このレンズに対するSIGMAさんのキャッチフレーズ「日常さえも想像以上」は伊達ではありません。
このレンズを持つことで、大人になって忘れてしまっていた世界に、再び目を向けるきっかけとなったという方も多いのは頷けます。
レンズの質感も優れており、各種スイッチ類も節度があり、それぞれにロック機能も備えています。
重量は700g台と軽量レンズに慣れた方にとってはやや重いですが、重量級の大三元ズーム標準24-70mmに比べると軽く、S1などのしっかりしたグリップのあるボディであれば、取り回しが苦痛になることはないはずです。
SIGMA fpやLUMIX S9などのコンパクトなボディで使用する際には、SmallRig などの後付けグリップが欲しくなりそうです。
欠点と言えば、マクロレンズであることもあって、AFがやや遅いこと。
また、付属のフードのゴム部分が少し粘着性があるため、埃が付着しやすいことくらいでしょうか。
AFの速度については速くはないため、ボデイの認識AF任せで動体をガンガンロックオンするような撮影には仕事には使えないと思います。しかし、取材時の商品や人物ポートレートなど、時間をかけて1枚ずつ撮ることが可能なら、画質も良いためどんどん使いたくなるレンズです。
私の場合、S1またはS1Rでの使用が多いため、レンズ側はフォーカススイッチはMF。本体はAF側に設定。レンズのフォーカスリミッターは状況に合わせて設定します。この状態で親指AFで強制的にAFを起動させて大まかにピントを合わせ、S1の高精細なEVFを以てMFリングで追い込むと概ね迷うことはありません
初心者の方がフルフレームのカメラを入手したら、ついつい「よりボケの大きな」F1.8、F1.4、F1.2などの大口径単焦点に目が行くことも多いですが、プロカメラマンの基本の1本ともなる中望遠マクロは持っておいて損はありません。
マクロに興味のない方には少し玄人向けのレンズではありますが、レンタルなどでも一度使ってみて欲しいレンズですね。