エクストリームスポーツまでは行わないまでも、自転車やバイクツーリング、海水浴やカヌー、キャンプや登山などアウトドアシーンでも安心して使用できるカメラのジャンルにアクションカメラがあります。
たくさんのシーンで気軽に楽しめることができるだけでなく、超広角でパンフォーカスの映像を高画質の4Kで残せることなどもあって、映像クリエイターなどには人気のカテゴリーとなるビデオカメラです。
代表的なアクションカメラではGoProシリーズが定番と言って良いのですが、空撮ドローンやカメラジンバル(スタビライザー)などで不動の地位を確立しているDJIが2019年5月にアクションカメラ業界に参入しました。
このサイトの読者の方は動画よりも写真好きの方が多いと思われますので、アクションカメラには興味のない方も多いかもしれません。
しかし、OSMO ActionやGoProは高画質のビデオ撮影だけでなく、超広角の写真を気軽に楽しむことができるカメラでもあると言うことは、意外にもカメラ好きには知られていないようです。
結論から言うと、現時点では写真好きの方なら最も直感的に広角写真の撮影を楽しめるアクションカメラと言えます。
レンズ交換式カメラを持ち歩きたくないシーンで1インチセンサー以下の高級コンデジなどを使用しているなら、そのワイドレンジのレンズ代わりに十分使用できるポテンシャルを持っています。
今回はDJIのアクションカメラOSMO Actionをスチルカメラとして掘り下げてみたいと思います。
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OSMO Actionは安価でRAWのマニュアル撮影に対応したカメラ
OSMO Actionは価格が安く堅牢で気軽に使いやすい
OSMO Actionの価格は3万円代から購入可能で、流石にエントリークラスのコンデジよりは高価とはいえ、ミラーレス一眼や高級コンデジの半額以下で購入することもできます。
通常のデジカメと違い絞り機能がなく、パンフォーカスで6cm以上離れていればピントが合うという点は絵作りの面では不利と感じている方もいるかもしれません。
しかし、超広角での撮影はあまりボケを狙うことは少ないことから、近景から遠景までシャープに撮影できる点がOSMO Actionのメリットでもあります。
レンズ交換式カメラや交換式レンズを持ち歩きたくないシーンなどでも、コンパクトなOSMO ACTIONならバッグの片隅に入れておくことで、気軽にワイド撮影を楽しめます。
OSMO Actionの撮影機能はスチルカメラとしても侮れない
写真撮影モードにはAUTOとM(マニュアル)が用意されています。
M(マニュアルモード)ではシャッタースピード(露出時間)を8000/1秒から120秒までの幅で設定することができます。
アクションカメラでありながら、露出の設定に関してはレンズ交換式ミラーレスの中級機並の幅であることに驚かされます。
AUTO(オートモード)についても完全なカメラ任せだけでなく、タッチパネルによる測光ポイントの指定によるAEロックも可能です。
簡単にできるマニュアル設定やRAW、JPEGなどの切替
3万円程度の低価格帯コンデジは写真(静止画)はJPEGのみであることが多いのですが、GoProやOSMO ActionではJPEG、RAW+JPEGが選択できます。
アクションカメラであることから水深11mの防水も備え、撮影モードもタイムラプス、スローモーションなどの動画だけでなく、写真のインターバル撮影も可能です。
気になる写真のマニュアル撮影モードでは色温度、ISO、露出時間(シャッタースピード)はもちろん、多くのマニュアル撮影向け機能が非常に使いやすいインターフェイスに配置されています。
AEBモードによるオートブラケット撮影やバースト(連写)機能
OSMO Actionの場合、GoProのようなJPEG撮って出しでHDR風写真などを撮影できるスーパーフォト機能はありません。
しかし、シンプルな操作でマニュアル撮影機能を簡単に呼び出して撮影しやすくなっています。
1タップで撮影メニューを呼び出して、写真タブをタップ。アイコン部分をスワイプするだけでそれぞれのモードを呼び出せます。
タッチパネルのレスポンスもスマートフォンと遜色ないレベル。
ブラケットの設定もアスペクト比が4:3と16:9で、1/3EV、2/3、1EVにそれぞれ3ショット、5ショットを選択できる本格仕様。
実際に撮影してAdobe Lightroomに読み込んだのが、下記の画像です。
スマートフォンアプリの「DJI Mimo」を使用して、こちらの画像から最適の画像を選択し、フィルタ加工などを行ってSNSでシェアする事も簡単に行うことができます。
PCに取り込んでLightroomなどを使用すれば、HDR合成なども楽しむことができます。
気軽に楽しめるOSMO Actionの超広角RAW撮影
上の2枚の画像は1枚目がオリンパスのミラーレスカメラに標準ズームレンズのワイド端12mm(35mm換算24mm)で撮影したもの。
2枚目が「OSMO Action」を使用しRAW+JPEGで撮影したものをLightroomで歪み補正した写真です。
どちらも同じ日に同じ場所から、2分ほどの差で撮影したRAWデータから起こしたものとなります。
そのデータを元にAdobe Lightroom classicに読み込み歪み補正と簡単な調整を行った後、Luminar3で同じ設定(LUT)を適用して現像してあります。
一般的なコンパクトデジタルカメラやレンズ交換式カメラのキットでも使われる標準ズームでは、広角側の最大が35mm換算で24mm〜28mm。画角で言うと84°程度です。
それ以上の広角撮影には、コンパクトデジカメでは対応できず、高級コンデジであればワイドコンバージョンレンズ(ワイコン)でより広角化する必要がでてきます。
一眼レフやミラーレスカメラなどレンズ交換式カメラなら、レンズ交換で対応できますが、キットレンズでは標準ズーム+望遠ズームレンズが一般的で、超広角レンズは付属しません。
この場合、超広角レンズや魚眼(フィッシュアイ)レンズなどを数万円〜十数万円かけて別途購入しなくてはなりません。
安価なワイドレンズもありますが、完全なマニュアル撮影専用であったりするなど、数万円で7mmほどの広角でAFが使える絞りF2.8での撮影可能なレンズとなると選択できる幅はほとんどありません。
動画撮影やVLOGなどに興味がある方の場合、どんどん持ち歩く機材が増えてしまう問題もありますので、アクションカメラをワイド用に使ってみるのも1つの手と言えるでしょう。
OSMO Actionの撮影画角は145°となっており、35mm換算にすると焦点距離は約7mmでF2.8のレンズを備えています。
カメラ本体のスペックは1/2.3 インチ CMOS、有効画素数:12Mとレンズ交換式カメラと比較すると見劣りしますが、明るいシーンでのパンフォーカス広角撮影にスポットを当てると、なかなか善戦してくれる性能を持っています。
加えてOSMO Actionをカメラとして使用する場合の最大のメリットは、この画角でのRAW画像撮影を気軽に行える点にあります。
広角用サブカメラやタイムラプス用にも有効
OSMO Action静止画としての用途だけでなく、雲の流れや夜景の光などを微速度撮影し、動画として生成するタイムラプスなどにおいても、そのコンパクトさや堅牢性、価格などから気軽に設置することができます。
もちろん画質においてはレンズ交換式のカメラに超広角レンズを装備し、インターバル撮影後にRAW現像して動画を作成する方がノイズや階調性に優れています。
しかし、フィールドでタイムラプス動画を撮影すると言うことは、その間にタイムラプスを撮影しているカメラは動かすことができません。
この手法では数十分から数時間もの間、撮影場所にカメラを固定しておく必要があります。
そうなると撮影待機中に出会えた動物や日没など素晴らしい絶景のシーンを撮り逃してしまう可能性があります。
対応するにはカメラシステムをもう一式持ち出す必要があり、積載量や体力、資金的な問題を解決しなければなりません。
プロや独身で写真だけを趣味にしている方ならともかく、フルサイズの同等クラスのカメラとレンズを常に2台用意して持ち歩くのは簡単なことではありません。
また、お手洗いなどやむを得ない事情で、カメラから目を離さなければならない場合などに、万が一カメラを盗難・破損などにあってしまった際にも、数十万円のカメラとレンズを失うよりも金銭的にも精神的にもダメージは少なく済むでしょう。
OSMO ActionかGoProの選択
アクションカムとしてライバル視されることの多い「GoPro7」や最新の「GoPro8」でも写真のRAW撮影は可能です。
ちなみに私はOSMO Actionを使っているのですが、いくつか理由がありますので挙げてみたいと思います。
・コストパフォーマンスが優れている
・デメリットとして書かれやすい画角も大きな問題がない
・ニュートラルなJPEGと現像特性
・タッチパネルのレスポンスが良く操作性に優れている
コストパフォーマンスが優れている
現行のGoPro8は55000円ほどですが、OSMO Actionは新品で4万円ほどで購入できます。
動画をメインで撮影している方なら撮影シーンによって、GoProとOSMO Actionは向き不向きはあるのですが、静止画のRAW撮影ということであれば、GoProに大きなアドバンテージは感じません。
JPEG撮って出しで映える画像が欲しいならGoProのsuper photo機能は魅力的なのですが、私の場合はその場でSNS共有と言う機会が少ないため、マニュアル撮影がストレスのないOSMO Actionを選択しています。
GoProに対するデメリットとして言われる画角
OSMO Actionの撮影画角は145°となっており、35mm換算の焦点距離は約7mmです。
ちなみにライバル視されることの多いGoPro7の35mm換算の焦点距離は6mmとなっています。
自転車やスキーなどでのダウンヒルのように、より全体の環境を把握できる映像の撮影など、より広角が必要ということであればGoProが若干有利です。
特に動画の手振れ補正機能をONにした際にはGoProとOSMO Actionで画角の違いが大きく、アウトドアアクティビティやエクストリームスポーツでの映像撮影がメインであれば、GoProを選ぶ気持ちも理解できます。
しかし、通常映像やVlog・写真の使用であれば、特に差を感じるほどの画角差はありません。
ニュートラルな現像特性
GoProでsuper photo(自動HDR&補正機能を行う機能)を使用したJPEGや動画は色鮮やかで、カメラ業界で言うGRブルーやオリンパスブルーのようにファンも多い印象です。
撮影して即SNSで公開するなど、海外風の写真の様な見栄えのする鮮明でヌケの良い色合いにしてすぐに使いたいなら、GoProはとても良いと思います。
OSMO Actionは動画は通常モードとカラーグレーディング向けのフラットなD-CLikeの2種。静止画はフラットな印象の静止画のみとなります。
そのため、カメラ任せの撮って出しで使用することが前提なら、少し味気なく感じてしまうことが多いようです。
センサーサイズの問題もあってダイナミックレンジに余裕がある訳ではありません。
写真撮影ではHDR機能が使えない為、逆光などで撮影した写真をすぐ使いたい際などにはGoPro7や8の機能が欲しい時もあります。
空のディテールを残そうと全体のバランスを考えてマニュアル露出を設定すると上記の様になってしまいます。
とはいえ、これは一般的なHDR機能のないコンデジやスマホ撮影と基本的に同じです。
RAWで撮影し、ファイルをLightroomで開くとヒストグラム上はこの様な感じで、白トビもクロつぶれも起こしていませんでした。
その為にRAW現像時の自由度が高く、好みに応じて処理してあげれば下の写真の様にHDRやGoProでsuper photoを使用したものに近い仕上げも可能です。
iPhoneの最新の画像編集機能やスマホ用のアプリを使用すれば、これに近いことが可能です。
あなたが自宅でRAW現像を行うことが多かったり、Instagramでフィルターをかける、アプリでLUTを適応するなど、フィルター・調整が前提であればOSMO Actionの方が扱いやすいと考えられます。
タッチパネルのレスポンスが良く操作性に優れている
デジタルカメラのタッチパネルは機種によってレスポンスやインターフェイスが違っており、タッチパネルでの操作が可能であっても、反応が鈍く操作にストレスを感じたりすることもあります。
GoProシリーズのタッチパネルも悪くはないのですが、電源オフからの起動時間が遅く、タッチの反応もややストレスを感じる操作感でした。
2019年10月に新たに発売された新型GoProの8で起動時間は改善されたものの、設定時のレスポンスはあまり変わらない印象です。
これは電源を入れて撮影を開始し、競技などを開始し撮影を継続したり、自身でカメラを操作することが少ないアクションカメラとしての用途であれば、大きな問題になることはありません。
しかし、写真撮影用のカメラとして考えた場合、状況に応じて撮影の設定を素早く変更できないとなると、どうしてもストレスが発生してしまいます。
その点において、OSMO Actionは起動時間が早く、クイックスタートボタンのカスタマイズ設定も簡単で、タッチパネルのレスポンスもスマートフォン並みにサクサク動きます。
まるでスマートフォン用のカメラアプリを操作しているような感覚です。
インターフェイスもカメラのマニュアルモード撮影に慣れているユーザーなら、MモードでISOと露出を迷うことなくスムーズにコントロールできるでしょう。
まとめ
高級コンデジに比べても安く手に入れることができ、RAW撮影も可能なアクションカメラOSMO ACTION。
基本的にはアクションカメラなので、コンパクトで堅牢性も高く、非常に使いやすくできています。
下手な高級コンデジ顔負けな画質でワイド撮影が可能ですので、映像撮影に興味がある方、タイムラプスを楽しみたい方はもちろん。超広角撮影用のサブ機として使ってみてはいかがでしょうか。
また、サードパーティー製のアクセサリーでミラーレスや一眼レフカメラ用のフィルターや三脚が使用できるアルミフレームなども販売されています。
そういったフレームを装備することでハードなアクションカメラとしての使用でなければ、既にお持ちのカメラ用NDフィルターなども使用できますので、撮影の幅が一気に広がることでしょう。
あとは写真撮影メインであればバッテリーは十分持ちますが、動画撮影時の駆動時間はバッテリー1本で通常1.5〜2時間程度です。タイムラプスなどで長時間の撮影を行うなら、予備のバッテリーと充電器があると心強いです。