2013年にオリンパスのOMDシリーズの初代E-M5を導入して以降、メインカメラはE-M1、E-M1 markII、サブ機をDMC-GF2、DMC-GM1とマイクロフォーサーズ(MFT)を使用してきました。
しかし、今年の2月の撮影中にレンズ交換を行う際、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROのフードが分解し、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROと共に地面に落下してしまう事故がありました。
そんな訳で、メインレンズのうち望遠ズームと広角ズームを2週間ほど同時にメンテナンスに出す必要が発生し、それをきっかけにフルサイズのミラーレス機LUMIX S1(DC-S1)を導入してみることにしました。
最近はLUMIX S5II(DC-S5M2)が発売されたこともあり、4年前(2019年)に発売したS1は現行機のフラッグシップシリーズでありながら、メーカーのマーケティング対象から外れてしまったのか、広告なども特に打たれておらず今更感はあるかも知れません。
とはいえ久しぶりに購入したフラッグシップカメラですので、比較しながら簡単に紹介レビューをしてみたいと思います。
フルサイズ導入のきっかけ&これまでフルサイズカメラを導入しなかった理由
まず、私がマイクロフォーサーズ(MFT)機を使い続けていた理由としては、私が写真を生業とするプロカメラマンではないため、ポートレートなど人物の撮影などを依頼されて撮影することが少ないこと。そのためフルサイズ機指定による依頼は皆無であり、あえて導入する必要性がなかったことがあります(一応、フラッグシップ機で撮影していますが)。
ときおり依頼されて仕事(有償)として撮影する案件は物撮りが多く、適切にライティングさえすればMFTの被写界深度の深さが使いやすいなどが理由としてありました。
また、マイクロフォーサーズは機材がコンパクトで、ワンオペで撮影する際にサブ機を含めて複数の機材を持ち歩きやすいこと。
そして何より通常の撮影であれば、作品として使用するのに十分な画質を持ちながら、レンズを含めたシステム全体のコスト面でも優れており、プロ向けに開発されたフラッグシップモデルであっても、1、2世代前のモデルであれば私のような予算的に余裕のないアマチュア写真家が複数台の購入がしやすい点などが挙げられます。
ただ、フルサイズ機を所持していないことを揶揄する意見があったことや、前々から最新の機種との画質を体験してみたいと考えていたので、今回のメンテナンスをきっかけに自腹レビュー的に購入してみるに至ったわけです。
LUMIX S1(DC-S1)の特徴
LUMIX S1(DC-S1)の特徴を簡単にまとめると、以下のような特徴を持っています。
- ライカカメラ社L-Mountを採用したフルサイズセンサーのミラーレスカメラで、スーパーソニックウェーブフィルター(SSWF:超音波防塵フィルター)を備えた有効画素数2,420万画素センサーを搭載している。9,600万画素相当のハイレゾショットも可能。
- 発売当時、世界初となる4K/60p動画記録を実現。高感度フルサイズミラーレス一眼としてデビュー。
- フルサイズミラーレスカメラとしては異例のサイズと重量を持ち、姉妹機のS1H(映像特化機)、S1R(有効約4730万画素の高画素機)と同様にバッテリー込みで約1017g、キットレンズの24-105mm F4装備で約1697gとなる。
- AFはコントラストAFのみではありますが、空間認識やディープラーニングを活かした被写体認識で高速・高精度なオートフォーカスを備えており、迅速かつ正確なフォーカシングが可能。
- LUMIX DC-S1は、ボディ側で6段分の5軸手ぶれ補正を搭載しており、レンズの手ぶれ補正とシンクロさせて7.5段分を発揮する。
- LUMIX DC-S1は、最大9fpsの高速連写が可能です。また、AF/AE追従もサポートしており、動きのある被写体を撮影する際にも使用可能。
- LUMIX DC-S1は、4K60pのビデオ撮影に対応しており、フルサイズのHDMI端子出力端子装備。さまざまな撮影シーンで高品質な映像を撮影することが可能。また、有償ファームアップでV-Logを搭載できる。
- 耐久性に優れるボディでマグネシウム合金製のボディを採用、40万回のシャッター耐久。防塵・防滴性能に優れている。
- LUMIX DC-S1は、約576万ドットの高画質EVFを搭載。
- デュアルカードスロット(XQD/SDダブルスロット)を搭載。
- ジョイスティックやステータスLCD、複数の物理ボタンなどプロ仕様を前提としたインターフェイス設計。
LUMIX S1 (DC-S1)のメリットとデメリット
上の特徴と被る部分もありますが、LUMIX DC-S1のメリットとデメリットをいくつか挙げてみました。
【メリット】
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画質の高さ: LUMIX DC-S1は、適度な画素数のフルサイズイメージセンサーを搭載しているため、高感度やダイナミックレンジ、階調表現に優れており、あらゆるシーンに対応する撮影が可能。
- 高感度性能: LUMIX DC-S1は、最高ISO感度51200まで対応しているため、暗い場所や夜景でも綺麗な写真やビデオを撮影することができる。
-
高度なビデオ機能: LUMIX DC-S1は、4K 60pでのビデオ撮影や、10ビット4:2:2の記録が可能ななど、高度なビデオ機能を搭載しているため、クリエイティブな映像制作にも対応する。
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操作性: LUMIX DC-S1は、直感的で使いやすい操作性を備えています。また、ボディには操作ボタンが豊富に配置されており、撮影までの設定スピードを高めることができます。
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防塵・防滴性能: LUMIX DC-S1は、ボディやレンズに防塵・防滴の機能を搭載しているため、屋外での撮影に最適。
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大柄なボディと重量は撮影時の持ちやすさと安定性に寄与する。
- フルサイズなので当然とはいえ、マイクロフォーサーズに比べて約2段分の被写界深度を稼げる(ボケが得やすい)。
- 主張が強い大柄なボディはセンサーサイズを指定するようなクライアントへの安心感にもつながり、ポートレートなどの撮影時に気分が上がりやすい。
【デメリット】
-
ボディサイズの大きさと重さ: フルサイズイメージセンサーを搭載したLUMIX DC-S1は、一眼カメラとしては比較的大型であり、ミラーレス機だけでなく、一眼レフを入れたフルサイズデジタルカメラ全体で比較しても重量級になる。撮影しているときは良好な反面、持ち運びには体力や収納サイズに注意が必要です。また、三脚も使用する際にはカメラとレンズの重さに対応したものが必要になる。
-
レンズの大きさ: LUMIX DC-S1に採用されるL-Mountレンズ。特に純正のLUMIX S PROレンズは特に大きく重い。
一般的なマイクロフォーサーズレンズを基本としているユーザーにとっては注意が必要です。 -
価格: LUMIX DC-S1は他のフルサイズカメラメーカーと比較すると不人気で、中古相場が下落しやすい。また、レンズはマイクロフォーサーズに比べて価格が高めでレンズを揃えるためには高額な出費が必要になる。意外と意識されていない方も多いが、レンズ径が大きくなるとフィルター径も大きくなることから、フィルターの価格も高価になる。
- やや設計が古い:2019年モデルとなるため、以降にメジャーメーカーが発表したフラッグシップミラーレスカメラと比較すると、AF精度や連写性能について劣る部分がある。
LUMIX DC-S1とマイクロフォーサーズ機のサイズを比較してみる
寸法を並べても少し理解されにくいと思いますので、実際に並べて比較してみたいと思います。
テーブルの上に並べ、上から眺めてみた視点です。
右からLUMIX DMC-GM1、OM-D E-M1 markII、LUMIX DC-S1。
レンズはよく使われることが多い代表的なものを装備してみました。
LUMIX DC-S1は純正標準ズームレンズLUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.を装備したもの。
中央がマイクロフォーサーズにしてはやや大柄なボディを持つE-M1 mark2に標準ズームのM.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8PRO。
右手のカメラはファインダーなしでマイクロフォーサーズ最軽量のLUMIX DMC-GM1にLEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.の単焦点レンズを装備したもの。
このように実際に並べてみるとよくわかります。
GM1であれば、コンパクトなレンズをセットすることで、カバンどころかコートのポケットにも収まる程度の大きさです。
E-M1となるとファインダーだけでなく、物理ダイヤルやファンクションボタンなど撮影時にはホールドしやすいグリップがついています。
本格的なカメラとして撮影時には使いやすい反面、軽量・コンパクトを優先した場合には少し邪魔に感じることもあるかもしれません。
そして最後にLUMIX DC-S1。
圧倒的な存在感とホールド性を持ちますが、逆に二回りほど大きく、日常的に持ち運ぶと考えると収納場所を検討する必要があります。
また、レンズ付きで約1697gと1.5Lのペットボトルより重いため、普段から常備するカメラとしては難があると言えるでしょう。
公共交通機関で毎日通勤する際、常に持っているビジネスバッグと資料PCなどに加え、更に1.5Lのペットボトルを追加すると考えると、その質量を理解できると思います。
当然ながらカメラは持っていなければ撮影することはできませんので、常備したいと考えた場合にはこれは大きな弱点になります。
順番が変わってしまいますが、こちらは正面から見た写真です。
こちらもLUMIX DC- S1の大きさが際立っています。
更にここから望遠レンズやF2.8以上の大口径ズームとなると、サイズと重さは更にアップすることになるため、撮影を目的とした移動以外では少し躊躇するサイズかもしれません。
LUMIX DC-S1の外観
LUMIX DC-S1はマグネシウム合金のボディでできており、高い耐久性と防塵・防滴性能を備えているとともに、質感も優れていると感じます。
無骨ですが個人的には道具としての良さを感じるデザインです。
ちなみに写真のレンズはシグマの軽量・コンパクトかつ良好な写りとビルドクオリティが好評なIシリーズ。20mm F2 DG DN Contemporaryを装備しています。
コンパクトさを売りにしている大口径単焦点レンズではあるのですが、あくまでフルサイズセンサーのレンズとしてはです。
サイズはM.ZUIKO DIGITAL ED12-40mm F2.8PROとほぼ同等となっています。
とはいえ、外観はミラーレス一眼カメラとしてはやや大型で大きなグリップが付いています。
手が大きな男性であっても小指まで握り込めるサイズで、安定して構えることができるだけでなく、レンズを装備した状態でも片手で持って不安なく振り回せるところが好感を持てます。
正面から見てレンズの左手には、ファンクションボタンが2点とレンズ取り外しボタンがあります。
レンズの取り出しボタンはマイクロフォーサーズとは逆方向に装備されているため、MFTに慣れている方は違和感を感じるかも知れません。
ただ、グリップを握った状態でボタンを押すポジションなので、慣れると誤ってカメラを落下させるような事故を防ぐことはできそうです。
また、グリップの側面にはXQD/SDダブルスロットが設置されています。
レンズの右手にはファンクションレバーがあり、機能を割り振ることができます。
特定の機能を割り振ることで、レバーを切り替えることで任意の機能を瞬時にON、OFFと切り替えることができます。
写真では汎用のLプレートを装備していますが、ボディ側面にはUSB-C(PD充電対応)、マイク・ヘッドフォンピンジャック、HDMIのインターフェイスが設置されています。
ボディの上部にはメインスイッチ、モードダイヤルとドライブモード切り替えレバー、前後ダイヤル、シャッターボタンが配置されています。
シャッターボタン後方にはWB、ISO、露出補正ボタンが並び、瞬時に設定画面にアクセスできるほか、連続で押下することで直接的にパラメーターを変化させることもできます。
また、ステータスLCDはバックライトのオンオフも可能です。
軍艦部の前方にはステレオマイクが設置され、EVFの左右にはEVFのモード切り替えボタンと視度調整ダイヤルが並びます。
撮影時に最もみる事になる背面は液晶とEVFを中心に、左にロックレバー、再生ボタン。
右手に録画ボタン、フォーカスボタンとレバー、親指フォーカスボタン、ジョイスティック、コントロールダイヤル、各ショートカットに割り当て可能なボタンが装備されています。
ちなみに液晶は賛否ありますがバリアングルではなく、縦横どちらにでも対応する3軸チルト式です。
カメラ単体で動画を撮影するアマチュアの方からは、バリアングルが良いという意見もあります。
しかし、バリアングルは液晶の接続部の堅牢性が損なわれる一面もあり、本格的に動画を撮る際のL字ステーやリグを組んだ場合、バリアングルは使用できなくなります。
プロの映像制作の方はリグに輝度の高いモニターを装備するケースも多く、これはこれで良いと考える方も多いと思われます。
実際にS1を使ってみた感想
実際にLUMIX DC-S1を導入して2ヶ月ほど使って、外観や重量インターフェイス部分の感想ですが、重量とサイズはシーンによっては不安要素になることはあるとはいえ、非常に優れたプロダクトであることは実感できました。
画質などについては別の記事で記載するとして、各種メニューやボタンも非常に分かりやすく作られており、一度理解してしまえば迷うことなく設定することが可能です。
現行のS5やS5IIについては、パナソニックのフルサイズ入門機的な側面もあるため、価格を抑えて軽量コンパクトになっている反面、一部犠牲になっている機能もあります。
静止画の画質や同等で、メニュー類は共通。動画のフォーマット的な部分では後発の利点もあり優れている部分もあるのですが、物理ボタンの配置など操作性や一部の機能の有無など、写真機としての適応力についてはS1の方が優れている部分もいくつか存在しています。
ただ、発売された時点でプロフェッショナルの写真家を考慮して使うことを考えて設計されているせいか、逆に一般では使い勝手が悪くなっている部分はあるように感じます。それは写真においても動画においても、妥協せずに使用することができることを念頭に製作された結果と言えるのかも知れません。
そのため発売時の価格が高価になり、サイズや重量面などは一般受けせず、一般ユーザーの求める製品像からズレてしまったこと。
そもそも動画ユースを除くカメラユーザーから望まれるブランド力が低いことも相まって、売上が振るわない状態になっているのだと感じました。
まあ、私の個人的にはその基本性能や独自の諧調表現などメリットも多く。
万人受けするカメラではないものの、人と被らない選択肢としても使い込んで行きたいと感じるモデルだと魅力を感じています。
個人的に一般の方にフルサイズ入門として購入を進めるのではれば、ソニーかメジャーメーカー2社。パナソニックを選びたいなら LUMIX S5IIを薦めます。
実際に私もフルサイズ機購入の際、LUMIX S5IIを予約したものの2ヶ月待ちと言われたこと。
S5II発売直後に幾つかの機能がS1より劣っていることなどもあって、レンズキットの汎用性とコスト面からS1を購入した部分もあります。
おそらく、動画メインで撮影するクリエイターであったなら、購入した状態から無料でLOG撮影が可能なS5IIを選んでいたと思います。
できることならS5IIのサイズで、静止画(スチル)の連写時に14bit RAW出力対応と、センサーのダスト対策にSSWF装備の機種が発売されてくれると嬉しいのですけど。
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