時間の制約を受けない旅を楽しみたい人。レジャーとして車中泊を楽しみたい人。
私のように写真撮影のために仮眠を撮るスペースを確保したい人など、生活の多様化で趣味として車中泊を楽しむ人が増えています。
車中泊を楽しむためには、まず車を準備する必要があります。
しかし、キャンピングカーを購入するとなると、購入費用や駐車場の確保など購入後の維持費を含めて高額になってしまいます。
予算に余裕があったり、車にこだわりがある人なら、初めから良い車を選ぶ人も多いでしょう。
しかし、あなたが車にあまり興味がなかったり、予算は心許ないが快適な車内休憩スペースを確保したなら、軽バンや軽バンベースの軽ワゴンがおすすめです。
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車中泊におすすめの軽バンとは
普通車、軽自動車に関わらず、快適に仮眠や車中泊ができる条件は足を伸ばして横になれること。
やはり最も居住性が高いのは、市販の軽キャンピングカーですが、購入費用は少し高価。
軽トラックの荷台にDIYで小屋を乗せてしまう強者もいるのですが、技術的なハードルが高くなります。
軽自動車では車体のサイズが厳密に決められているので、フルフラットにシートアレンジできる車種が有望です。
そこで最も簡単に車内スペースを最大限に確保できるタイプの車ということで、「キャブオーバー」タイプの軽貨物自動車や軽貨物ベースの乗用ワゴン車がオススメです。
現在、軽バンといわれるクルマはエンジンを運転席の下にレイアウトするキャブオーバーバンと、乗用車のようにエンジンを前に置くボンネットバンの2種類があります。
キャブオーバーは英語で「Cab over the Engine」と表記します。
運転席(cabin)がエンジンの上にある(over)タイプの車という意味です。
車内スペース、特に長さを広く確保することに有効なパッケージングになっているため、国内のトラックやバス、貨物車の多くはこの形式を採用しています。
逆にエンジンルームを車体の前方に配置した貨物モデルは「ボンネットバン」と呼ばれますが、軽自動車の車体サイズの規制により、車中泊向けと言えるボンネットバンはホンダのN-VANのみとなっています。
キャブオーバーの軽バンのメリット・デメリット
キャブオーバーの軽バンですが、軽貨物のシャシーをベースに快適装備を加えて乗用車タイプにした「ワゴン」も、形状が同じことからまとめて軽バンと呼ぶこともあります。
まず、バンタイプのメリット、デメリットを紹介します。
キャブオーバー軽バンのメリット
キャブオーバータイプのバンは後席を格納することで、170cm以上の長さのスペースを確保できます。
通常の軽自動車の場合、運転席や助手席までの全ての格納することで、足を伸ばして就寝できるスペースを確保できる車種はあります。
しかし、運転席まで格納してしまうと何かトラブルが発生した際、すぐに車を移動させることができなくなります。
キャブオーバータイプは運転席はそのままでも約170cm。
前座席をスライドさせるだけで180cm近いフラットな荷室を確保できるので、下手なミニバンよりも快適な寝台スペースを作ることができます。
また、新車の価格が安く。通常の軽乗用車と比べ、導入コストと税金などランニングコストの安さが際立ちます。
荷室は質素な代わりにカスタマイズしやすいところもポイントが高いところです。
最近では海外の自作キャンピングカーのスタイルの影響を受けた、バンライフYouTuberの人にも愛用されている人が多いようです。
- 装備が簡素化されているので、後部荷室をDIYで加工する際に自由度が高い。
- 前席を収納することなく、170cmほどの寝台スペースを確保できる。
- キャンプなどでも大量の荷物が積載できる。
- 後部荷室の内装がカットされており、車体サイズを最大限に活かした積載・改良ができる。
- エアコンなど快適装備が最低限の商用モデルのため、税金などが優遇されている。
- ワゴンタイプや一般的な乗用タイプの軽自動車よりリーズナブルな車体価格。
- 全体的な維持費が安い。
- リセールバリューが高い
- 前席はそのままで就寝スペースを確保できる。
- 見た目は営業車なので、田舎で止めていても悪目立ちしない。
キャブオーバー軽バンのデメリット
通常の軽乗用車と比較すると、装備品は簡略化されており、チープな印象は否めません。
また、貨物車であることから、乗り心地などは突き上げがキツくなっています。
- 乗用タイプの軽自動車に比べ、内装(インテリア)が簡素。
- 快適装備が最低限しかない。
- 初回の車検が2年(乗用ワゴンは3年)
- 通常の軽乗用車に比べ、サスペンションがトラックベースで乗り心地が悪い。
派生車種のキャブオーバーワゴン
キャブオーバーワゴンはキャブオーバーバンをベースに内装やホイールなど装備を豪華にして、乗用として販売したモデルです。
快適装備が増えたことから法律上は軽乗用車扱いとなるため、車体のベースが同じでも税金などは高くなります。
基本のシャシーは同じなので、バンと同様に後部荷室は充分に確保されています。大きく性能が向上するわけではありませんが、家族3〜4名で乗車することが多いなら、貨物仕様のバンよりもオススメです。
バンモデルとの違いを簡単にまとめてみます。
キャブオーバー軽ワゴンのメリット
- オートエアコンやオーディオ、安全装備、オートクルーズなど、バンに比べて豪華な装備が選べる。
- 通常の軽自動車と同様、後部も内装が装備されている。
- 初回の車検が3年
- タイヤや外装カスタムの法規制が少ない
キャブオーバー軽ワゴンのデメリット
- バンに比べて税金が高い(普通の軽自動車と同額)
- バンに比べて後部荷室が内装分だけ狭い
- バンに比べて購入時の価格が高い
軽自動車税
車両区分 | 税金 |
軽乗用 | 10,800円 |
軽貨物 | 5,000円 |
車中泊で軽バンが向いている人
- 車にスピードやブランドなどのスペックを求めない人
- 車に求めるものが目的地までの移動と荷物の積載をメインにする人
- 走行中の追い抜きや煽り運転にも焦らず冷静に対応できる人
- 自分自身で工夫して道具を使いたい人
- 1名〜2名乗車がメインの人
車中泊で軽バンが向いていない人
- 車にステータスを求める人
- 追い越しされるとイライラする人
- スピードを出したい人
- 乗り心地を重視する人
- 静粛性や高品質なオーディオ環境を求める人
新車購入できるキャブオーバーの軽バンの種類
2021年現在、キャブオーバーの軽バンはホンダを除く各メーカーで販売されています。
しかし、過去には国産メーカー各社が自社開発の軽バンを販売していた時期もありますが、現状はスズキ エブリイとダイハツ ハイゼットカーゴのOEM車となりますので、実質的に2車種のみの展開です。
ちなみにホンダのみ、キャブオーバーの取り扱いは終了していて、N-BOX系プラットフォームのボンネットバンモデル「N-VAN」のみとなっています。
ちなみに各メーカーでの車名は下記のようになっていて、販売するグレードの種類や装備品、カラーバリエーションに差はありますが、走行性能に差はありません。基本的にはメーカーロゴが違うだけで、中身は全く同じものと考えて問題ありません。
エブリイ系
メーカー | 軽バン(貨物) | 軽ワゴン(乗用) |
スズキ | エブリイ | エブリイワゴン |
日産 | NV100クリッパー | クリッパー リオ |
マツダ | スクラムバン | スクラムワゴン |
三菱 | ミニキャブ バン | タウンボックス |
ダイハツ ハイゼットカーゴ系
メーカー | 軽バン(貨物) | 軽ワゴン(乗用) |
ダイハツ | ハイゼットカーゴ | アトレーワゴン |
トヨタ | ピクシスバン | - |
スバル | サンバーバン | - |
キャブオーバー軽バンと軽ワゴンの違いを写真で見る
私自身も過去にワゴンのバモス。バンのスクラムバンのどちらも乗っていました。
せっかくですので、後部荷室の内装の違いなどを写真で見てみましょう。
まずこちらが「ホンダ アクティ(バン)」のノーマルルーフをベースにした、ワゴンタイプ「バモス」の荷室です。
2015年まで乗っていたの車両で、初期型HM1の標準ルーフになります。北海道に在住していた頃、旭川市で購入したので、4WD仕様になっています。
下の写真のバンと、床や壁面を比較してみてください。
まず、床面ですがワゴンタイプはカーペット地になっており、小さなミニバンのような印象です。
側面の壁についても、窓枠からヘッドレストを収納できるポケットまで、全面が樹脂製の内装パネルに包まれているので、エントリークラスのコンパクトカーに近い質感を維持しています。
カーペット地なら、床の鉄板からの冷気も多少は遮断できます。
このままでも就寝部分にマットを敷く、ガラス部分にカーテンなどを装備する程度で快適な車中泊も可能になります。
色々と設置するのは面倒という人は、こちらのワゴンの方をお勧めします。
こちらが私の現在所有しているスクラムバン(2018年登録)のハイルーフ。ノーマル状態の荷室に荷物を積んだものです。
天井収納は純正オプションのネットラックを装備していました。
先の写真のバモスと比較してみると、内装も簡素で、貨物仕様であることが分かりやすいと思います。
床は鉄板に防音のマットとビニールのシートが貼られているだけで、壁面の内装も鉄板剥き出しと最低限のものです。
このままでも車中泊は可能ではあるものの、床は硬いし壁は鉄板なので味気なく感じます。
冬場は鉄板部分からも冷気が伝わってくるので、少し工夫が必要です。
私が実際に乗っているスクラムバン
2021年現在、私が車中泊や撮影に使っているのは、マツダ スクラムバンのハイルーフ4WD 2018年モデルです。
型番はDG17Vで、スズキ エブリイ(DA17V)のOEM車になります。
フロントのマツダロゴを除けば、エブリイバンと同じ車です。
4WDを選択した以外はフォグライト、オートライトなどのオプションをつけて、割引込み130万円程度でした。
エブリイバンはトランスミッションを4AT(トルコンオートマチック)、5MT(マニュアル)、5AGS(オートギアシフト)の3種類から選択できます。
4ATは昔ながらのトルクコンバータを使用したオートマチックで、特に慣れも必要ありませんが、軽では重量とコストの関係で多段化が難しいため、燃費が悪いというデメリットがあります。
5MTは特にデメリットはないのですが、運転者(免許)を選びます。
5AGS(オート・ギア・シフト)はフォルクスワーゲンやポルシェなどに使われていたAMT(オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)と同じ理論のものです。
基本的にMTと同じ機構がベースになっており、電動油圧式アクチュエーターがクラッチとシフト操作を自動でおこなうため、一般的なATと同じような自動変速モードが備わっているため、AT免許の人でも運転できます。
市場では賛否両論ある5AGS(オートギアシフト)ですが、否定的な意見は日本の自動車ユーザーがCVT(無段階変速)のオートマチック車に慣れすぎているせいだと感じます。
AGSシステムはMT(マニュアルトランスミッション)のクラッチ操作を機械式に自動化したものですので、ATとしては乗り味にクセがあり、最近のAT車に乗り慣れているなら違和感を感じることが多いのも頷けます。
逆にMTに乗っていた人なら、ノンクラッチで勝手に変速してくれる車として、あまり違和感なく乗ることができるはずです。
クラッチが接続後はMTと同様、アクセル開度とエンジンの回転、走行スピードがダイレクトに連動するため意外に気持ちよく。変速機構によるパワーロスも少ないため燃費に優れるのが嬉しいところです。
私自身も、過去にレビン、MR2、エブリイ、キャリイ、デミオとMT車を多く所有していたことから、意外と違和感なく乗りこなすことができました。
ただし、エブリイ系の5AGSにはスズキ車のアルトターボRSやワークスのような、ターボエンジンのグレードが選べないところが残念です。
こちらの写真は、スクラムバンの荷台をフルフラット化しているところです。
自作キャンパーの方は床をコンパネで作り、スポンジとレザーシートを貼ってクッションのように加工している車も多くみられますね。
壁面の木材はサイドテーブルや収納などを追加するため、フレームになるSPFのツーバイ材を6mmボルトで固定している状態です。
内装が装備されていない分、ボディサイズのギリギリまで使ったりできるのが、バンの強みですね。
現在は荷室片側にサイドテーブル。リアゲート前にカウンターテーブル、天井の左右に収納を追加しています。
木の質感を生かしてバンガロー風に作っていく予定です。
まとめ
バンライフを謳ったYouTuberも増えて、興味を持っている人も多いと思います。
軽バンなら、それほど気負わなくても、少し装備を追加しただけで車中泊スタイルを楽しむことができます。
フラットな床を作る程度であれば、DIYでの製作も意外と簡単ですし、失敗しながら色々と作っていくのも楽しいですよ。
とりあえず、フラットな床さえあれば車中泊だけでなく、ドライブや写真撮影の隙間時間に休憩するスペースとしても優秀です。
興味を持ったなら、ぜひチャレンジしてみてください。