スマートフォンカメラで写真を撮影をした際、緑や青い光の玉が写り込むことが気になっている方がいるようです。
これは特に空を撮影した際に発生することが多く、スマートフォンカメラの不具合を疑ったり、レンズのゴミが原因かと勘違いしたりする方も少なくありません。
稀有なケースではオーブや玉響(たまゆら)現象などと呼ばれて、心霊写真扱いで大騒ぎなんて事もあるとかないとか。
実はこの光の玉、ゴーストと呼ばれるもので、昔からカメラを使って写真を撮っていた方には馴染みのあるものなのです。
今回はゴーストの発生条件と撮影の際の対策について書いてみたいと思います。
謎の光の名はゴースト
「ゴースト」と聞くと「やっぱりお化けじゃないか」と思われるかもしれませんが、写真用語で言うゴーストは「強い光源からの光がレンズ内で再反射すると、光源から画面中心を基準に対称の位置に比較的はっきりとした光の像が現れる現象」のことを指します。
こちらの写真では左の太陽(光源)に対して右にゴーストが発生しているのを確認することができます。
また、この写真のように光源から発生した光で、暗部に対して光がかぶりぼやける形態のものを「フレア」といいます。
このゴーストやフレアという現象はカメラを使っている方にとっては身近なもので、色々と悩まされる現象でもあり、逆に強い日差しを表現するための手法のひとつとして利用されることもあるのですが、一般的な方にはあまり知られていませんでした。
それがスマートフォンのカメラの画質の向上や、SNSなどによって写真の撮影が一気に身近なものとなったことで、これまで特に意識していなかった人にも目につくようになったといえます。
ちなみにゴーストやフレアはレンズとカメラシステムの性質上、どうしても発生してしまうものです。
数十万円の高級なカメラとレンズではフレアやゴーストの発生を防ぐため、専用のコーティングを施したり、レンズ構成を最適化して発生を抑えるように工夫されていますが、それでも全ての条件で完全にゴーストの発生を防ぐことはできていません。
こちらはオリンパス のE-M1というミラーレス一眼カメラにM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROというレンズを使用して撮影した写真です。
先ほどのスマートフォンの写真に比べると目立ちませんが、本格的なカメラであっても条件によってはゴーストは発生します。
ゴーストを消すにはどうすれば良いの
全ての写真でゴーストが発生を避けることはできませんが、ゴーストの発生する条件を回避することで、ある程度は防ぐことができます。
知っているだけで変わってきますので、その方法をいくつか紹介します。
まずはレンズをキレイにする
これはゴーストというよりもフレアの発生対策となるのですが、まずはカメラのレンズが汚れている場合には撮影前にクリーニングするようにしましょう。
スマートフォンで写真を撮っている方の多くがレンズの汚れに意外と無頓着のようです。
油や埃などがレンズに付着していると、意図せず画質が低下したりモヤのようなフレアが写り込むことがあります。
レンズの表面についた油や汚れが光を受けてしまうことで、レンズの表面で意図していない反射が発生するためです。
クリーニングは100円ショップなどで安いメガネ拭きなどを買って、バッグに入れてくだけでOK。
レンズの汚れが気になったら、撮影前などに軽く拭き取れるようにしておくと画質の低下を避けることができます。
構図から光源(発生源)を外す
昔の写真の界隈では「撮影時に逆光を避ける」なんて格言もよく耳にしたのですが、特殊なコーティングなどの登場などによって、ゴーストやフレアの発生をかなりのレベルで抑制できているレンズも登場しています。
RAW現像などの技術も一般に浸透したことで、黒く潰れがちだった逆光写真のシャドウにディテールを回復させることも慣れれば難しくありません。
そういった技術の進歩により、日常的に構図の中に「太陽などの強い光源」が写っている写真を目にすることも増えていることは確かです。
ただ、そういった逆光写真身近に観賞することで、逆光撮影時にゴーストが発生してしまうことを意識していない方も増えていることは否めません。
スマートフォンのカメラも進化しており、自動的にHDR現像を適応して撮影する機能を搭載したモデルもありますので、構図の中に太陽を入れた写真を撮影するハードルは確実に下がっています。
しかし、残念だなら青や緑の玉のようなゴーストを完全に防ぐまでにはいたっていないのです。
そこで基本に立ち戻り、フレームに太陽などの強い光源を入れないようにしたり、光源の位置を調整する。ズームやトリミングでカットするなどで、写真内へのゴーストの発生(進入)を抑えることができます。
撮影:iPhone7
こちらは夜明けの海岸で朝日を撮影した写真です。
左上の写真では左下にゴーストが発生しています。
そこで、右の写真のように太陽の位置を少し右にずらしてフレーミングすることで、対角のゴーストをフレームの外に追い出すことができました。
撮影:iPhone7
こちらは定点(同じ位置)で撮影を行った際の写真です。
同じ場所で撮影したものですが、数分間の違いで太陽に対して雲がわずかにかかっています。
雲が影を落とすことで、砂浜の色合いが変わっています。
ただ、太陽の光を雲がわずかに遮っているため、レンズに対する光の入り方も変化して、先ほどまで発生していたゴーストが消えています。
光源をフレームから外すといっても、完全にフレームから排除する以外にも角度を変えたり、木々の枝葉や構造物などで太陽を覆うだけでもゴーストの発生を軽減することが可能です。
レンズ交換式カメラのレンズについているフードの代わりに、レンズの上部に手をかざしてみたり、遮蔽物を置いてみるのもカメラ用語で「ハレ切り」というテクニックで効果があります。
どちらも「被写体として太陽を入れたい」という場合は難易度が高いのですが、表現したい被写体が青空であったり、花畑など別のものであれば、構図から太陽などの強い光源を外すことでゴーストも解消する場合が多いと覚えておきましょう。
光源を構図の中心に設定する
ゴーストは光源の対角点に発生する法則から、光源をフレームの中心に配置することでゴーストを消すことができます。
正確には光源とゴーストを重ねるといった印象です。
撮影:iPhoneXR
こちらは実際に太陽をフレームの中心に据えた写真です。撮影時にゴーストの発生を画面で確認できていたなら、太陽にゴーストが重なって消えるのを見ることができるはずです。
ただ、完全にゴーストを消すことができる反面、太陽が構図の真ん中に配置されてしまうため、表現として意図しない限り微妙な写真になりやすいことは否めません。
これに対しては諦めるか、画素数の多いカメラで撮影してトリミング(クロップ)で構図を変更するしかありません。
レタッチで修正する
最後にレタッチソフトで削除するという方法です。
PCに転送したり、別途レタッチ用のアプリ(APP)をスマートフォンに追加する必要がありますが、背景の構造物が複雑な場合を除きキレイに除去可能です。
実際にレタッチでゴーストを削除した画像がこちら。
記事の冒頭でも使用していた写真をPhotoshopのスタンプツールで修正したものです。
まとめ
スマートフォンでの撮影の場合、一眼レフやミラーレス一眼のようにゴーストの発生が少ないレンズに交換したりすることはできません。
しかし、事前にゴーストの発生する条件や発生時の対策法を知っておくことで、いざ撮影となった際にゴーストの発生を回避したり、後処理でリカバリーする。
また、別構図で数枚撮って最も良いものを選んだりできるので、失敗写真を減らすことができます。
このことを知っていれば、いずれ本格的なレンズ交換式のカメラにステップアップした際にも、スマートフォンで撮影した際のテクニックは基本として役に立ちます。
逆光の写真を撮る際にはぜひ試してみてください。
きっと撮影する楽しさが深まることでしょう。