現在、私自身がメインで使用しているカメラはマイクロフォーサーズ(MFT)のE-M1 mark2です。
私がMFTを使う理由は、システム一式を持ち運ぶ際のサイズと重量などが、他のフォーマットに比べ軽量でコンパクトであること。
通常の撮影であれば十分高画質な写真クオリティを備えながら、レンズとカメラ一式を揃えた際のコスト面でも優れていることなどが挙げられます。
しかし、日常的な日中や街中の撮影であれば十分な画質と言っても、夜間の郊外など特殊な条件で撮影する場合にはフルサイズのダイナミックレンジや高感度耐性、解像力などが欲しくなることは事実です。
そこで2021年の初夏の頃から、驚異的なノイズリダクション性能で噂になった「DxO PureRAW」の実力を試してみました。
その結果、使用してみた感想は想像以上のものでした。
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DxO社製PureRAWでMFTの高感度ノイズを処理する
PureRAWの使い方
使い方は非常に簡単です。
- 処理したいRAWファイルをドラッグ
- ファイルを選択して「画像を処理」をクリック
- 適用するアルゴリズム(方法)と書き出し形式(JPEGかDNG)、保存フォルダを選択
- 「処理する」をクリック
各表示部分は日本語化されているので、初心者や英語が苦手な方でも問題なく使用できます。
初めて使用するカメラやレンズではプロファイルのダウンロード画面が表示されます。
では実際にやってみましょう。
インストールして初回起動すると上のようなウインドウが開きますので、テストしたい方は「デモ版を試用する」をクリック。
購入する方は「購入」。購入済みの方はコードを入力して「ライセンス認証」を選びます。
こんな感じのメイン画面が開いたら、処理したいRAWファイルをドラッグ&ドロップ。
画面が英語表記だった場合に日本語化したい時は
右上のメニューから「DxO PureRAW」 → 「Preferences...」
「Language」から「日本語」を選択して「Save」で日本語化されます。
サムネイルが表示されたら、左上の「画像を処理」をクリックします。
方法は「HQ」「PRIME」「Deep PRIME」から選びます。
HQは一般的な日中の撮影画像など、「PRIME」は暗所ノイズなどを処理したい場合。「Deep PRIME」がGPUを利用した処理とのことです。
PCのスペックがそこそこある場合、Deep PRIMEで概ね問題ないですが、用途によって癖が出る場合がありますので任意で選択します。
DxO社製PureRAWの結果
実際に適応してみた写真がこちらです。
撮影データはE-M1 mark2にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO。
ISO3200、F2.8 露出時間は2秒。
ブログ記事にリサイズされた写真では分からないと思いますので、拡大した写真も用意しました。
こちらが実際に撮影したデータから露出をややプラスに補正。200%に拡大表示したものです。
拡大して比べてみると分かりますが、ノイズが綺麗に処理されただけではなく、蛍や足元の葉の葉脈のディテールが綺麗に復活しています。
次に日中の写真ですが、かなり古い写真を試してみました。
2009年の秋。北海道の森でエゾシカの撮影をしたときの写真です。
写真データはこちら。
使用したカメラはキヤノンのAPS-C中級機EOS-20D(800万画素)。
レンズはタムロンの高倍率ズーム「AF18-200mm F/3.5-6.3 XR Di II」です。
2004年発売のカメラに今なら1万円以下で購入できる手振れ補正もない安いレンズの組み合わせ。
15年以上前の機材になります。
全体の日中の写真ですので、どちらもノイズは問題ありません。
比較した際に目につくのはエゾシカの顔や角の質感。
現像時に無理にシャープネスパラメーターアップは背景のボケ部分などが不自然な感じに輪郭が現れたりすることもあるのですが、背景も綺麗に処理されています。
DxO社製PureRAWと一般的なソフトのノイズ除去の違い
一般的なRAW現像ソフトウェアを使用して高感度ノイズの軽減・除去処理を行った場合、周囲の画素部分と平均化してノイズを目立たないように処理されます。
確かにノイズ自体は目立たなくなるのですが、油彩や不透明水彩で描いた絵画のような写真になってしまいます。
その為、星空などを専門に撮影される方は赤道儀などを使用して複数枚の写真を撮影。その写真をスタック(合成・平均化)して処理することで、解像感を保ちながらノイズを低減させる処理をおこないます。
DxO PureRAWは「ノイズ除去ソフト(ノイズリダクション専用ソフト)」ではなく、RAWファイルの最適化ソフトです。
DxO PureRAW は、あらゆる RAW ファイルに存在する 7 つの問題 (デモザイキング、ノイズ除去、モワレ、ディストーション、色収差補正、不要なヴィネット、シャープネス不足) をインテリジェントに解決します。
DxO公式サイトより
https://www.dxo.com/ja/dxo-pureraw/why-pureraw/
公式サイトのコメントに上記のような一文がありますが、実際にその言葉通りの機能です。
なお、効果は3種類から選択するのみで、各種パラメーターをユーザー側で細かく調整することはできません。
これによって、単純にノイズを除去するだけではなくレタッチに入る以前の不要な要素を除去し、より再現性の高いデータに補完していると言えるでしょう。
マイクロフォーサーズでのPureRAW使用感
実際にMFTで使用してみた感じですが、想像以上に良好な結果となりました。
PureRAWのメリット
高感度ノイズ除去の性能については驚異的なレベルの性能といえます。
古いカメラやマイクロフォーサーズなど最近のフルサイズ機と比較し、高感度ノイズ的に不利なカメラを仕様されている方には特に有効でしょう。
- 簡単な操作で処理できる
- 被写体のディテールを維持しつつ高レベルなノイズリダクションを実現
- RAW(DNG)ファイルを出力するため、イメージに合わせた現像処理が可能
通常のノイズリダクションでは難しいディテールを回復させながら、ノイズを緩和させる結果は素晴らしいものです。
また、通常はPhotoshopなどでレタッチする場合、色味や各種パラメーターの現像だけでは不可能な処理。
例えば複数のパラメーターの調整やマスキングが必要な処理を1度で対応できる点も優れています。
自動処理しかできないとはいえ、あくまでPureRAWはレタッチソフトではなく、料理で言うところの食材であるRAWファイルの下処理してくれるものです。
各種レタッチソフトを使ってここから好みで仕上げることが可能で、ノイズによって処理が難しかったアレンジも試すことが可能になります。
PureRAWのデメリット
星など一部の光源処理などで、ごく稀に意図しない結果が出てしまうことがあるようですが、概ね問題ない結果を出してくれます。
ただ、欠点がないわけではなく下記のようなデメリットがあります。
- ファイルサイズの肥大化
- 処理はRAWファイルのみ対応
- 一部対応していないRAWファイルがある
- 一部の光源については不自然な描写になることがある
処理すると同時にノイズリダクションとともに不足するディテールデータを補間しているのか、データサイズは格段に大きくなってしまいます。
下記のように2000万画素クラスのマイクロフォーサーズのデータですら、1枚60MBをオーバーします。
1度の撮影で数百枚以上撮影し全て、プリセットで処理して比較したい方などには向かないでしょう。
また、MFTだけでなくフルサイズの高画素機など高スペックのカメラをお使いの方で、予算をカメラとレンズのみに割いてしまい、PCのスペックやストレージに余裕のないユーザーにとっては、追加の出費となり懐事情には辛い部分となるでしょう。
対応しているカメラとレンズの組み合わせに対してRAWファイルのみ処理することができる仕様のため、撮って出しのJPEGやTIFFなどの画像を処理することはできません。
補正はカメラとレンズの両方のプロファイルが揃った場合に適応することができるため、マウントアダプターを使用している場合やクラシックレンズなどを使うことはできませんが、Fujifilm 製の X-Trans センサー搭載のカメラを除けば、純正レンズやタムロン、シグマなどの多くのレンズに対応します。
対応については公式サイトで確認してください。
PureRAWの注意点
PureRAW側でレンズプロファイルを適応して補正を行ったRAWファイルに対し、PhotoshopやLightroomなどのアプリケーションで追加の現像処理を行う際には注意点があります。
現像・レタッチの際に「シャープネス」、「ノイズ軽減」、「レンズ補正」を行うと、2重で同等の処理を行なってしまうことなり、不自然にエッジが強調されたり、ディテールが失われたり、歪みが発生したりする場合もあるようです。
まとめ
全てがパーフェクトとはいえませんが、特にHDRやブラケットからのスタックでは難しいと思われる「自動車や動物など動く被写体が含まれる風景」の撮影では、DxO PureRAWの使用は有用性が高いと言えますね。
MFTの高感度ノイズに関しては概ね1段から2段分、E-M1 mark2などISO1600が許容限界と考えられていたカメラでは3200から6400なら使用できる範囲となるでしょう。
無料で1ヶ月試用ができるようですので、気になる方は導入してみてはいかがでしょうか。